あきらめなければゴールは確実に近づいてくるH15.05.18

−血と汗と涙のゴールから,さらに広がる無謀な夢?−徳武さおりさんの完走記


NMC女性完走者のツーショット
左:徳武(筆者),右:高橋ゆり子女王
ゴール後の体育館にて
手にしているのは完走メダル.残念ながら
数が足りなくて徳武・高橋は当日手にする
ことが出来ず,後日郵送となってしまった.
もう入手できたかな?

ゆり子女王に勇気づけられ...

 長野マラソン終了後3週間,なんだかぽっかり穴があいたような全く緊張感のない状態で前日を迎えてしまった.こんなんでいいのだろうか?完走なんてできるのか?自信がない.チームの方には励ましの言葉をいただいたりもしたが,こればかりはどうしようもない.さらに明日は雨,頂上付近では氷点下になるかもとの予報.最悪だ・・・.そんなことを考えて電車に乗った.小諸からは同宿のゆり子さんと一緒になり,話をしているとゆり子さんも同じような気持ちらしい.さらに体調も万全ではない.しかし「根性はだれにも負けない!スタートすればなんとかなる!」とさすが女王の貫禄だ.すごい,私ももっと強くなりたいと思った.

練習のようなスタート?

 当日5時15分前,NMC集合写真の時間にはトイレの混雑のためまにあわず(ごめんなさい).スタートの合図とともに走り出す.なんだか普段の練習に行く朝のような気分だ.これはほんとにレースなのか?主催者の坂本さんと高瀬みどりさんに見送られ握手,せめて収容されるまでは走ろう,そう考えたら少し楽だ.最初の舗装路はごくゆっくり行く.キロ8分で十分まにあうのだから焦る必要はない,と思っていたがまわりは結構はやい.多分私は最後尾に近かったのではないか?.


序盤

 ここからは約20km石がごろごろする林道トレイルが続き,標高1909mまで登っていく.心配はしていなかった.トレイルは大好き,去年京都の東山36峰30km(コースのほとんどが未舗装の山の中,12月開催)もとても楽しかったからだ.しかし落ち葉でふかふかの山道とは違った!転ばないよう常に足元が気になる,すぐ前にランナーがいると先がよめず走りにくいので右へ左へコースを蛇行,何より石のせいで足に衝撃がきたようだ.つらい,序盤からこのつらさでは関門でひっかかるのがおちだろう.考えが後ろ向きになっていく.それでも進んでいくと石が減ってだいぶましな道になってきた.気がつくと小鳥の声が聞こえる.そしてまわりはきれいな木立だ.前方には雪をかぶった横岳がでーんと構えている.おおっ!こんなすばらしい自然のなかにいたのか!今頃気が付く.少し余裕がでてきたようだ.

20キロ付近

 標高1909mの看板がある.よくここまで登ってきたものだ.とりあえず自己新(標高)達成.課題のひとつはクリアーしたと考えよう.するとあれ?前方に石川さん発見,どうしたのだろうか?いつもならこんな位置で走ってるはずがない.きくとやはり萩のダメージはすごかったようだ,棄権するとのこと.ようし私は石川さんの分まで頑張るぞ,ようやく気合いが入った.ここからは下りになるがこれが一向に進まない.このままでは50kmの関門でさえ大丈夫だろうかと不安になる一方だ.そして35km稲子の湯の大エイドでは里香さんに「きっと関門まにあいません」と弱音を吐く始末.とりあえずここでお汁粉をいただき,長居は無用なので即出発した.

35キロ以降

 お汁粉が効いたのか,いつものように走れる体にもどったようだ.自分のペースを守り走る.松原湖まで一気に下るがとばしたつもりはない.自分の感覚に従って走り続けるとどんどん前のランナーを抜けるので,おや?とは思ったが淡々と進む.

50キロ付近

 下りきって気がゆるんだか転倒.柔道の受身状態で転んだので右ひざと左肩を強打してしまった.なにもない舗装路で転ぶという大ばか者である.1月に買ったばかりのCW−Xの右ひざが破れ,血が少しでている.幸い走るのに支障はないようだ.これもすでに予行演習ずみのこと,あまり気にはしていなかったが後ろからきたランナーに次々に「大丈夫?走れる?次のエイドで手当てしてもらいな」など声をかけていただく.カットバンもいただいて貼り再出発した.
 58km大エイドまでは折り返しとなり,続々NMCランナーとすれ違う.みんな速いなあ.まだまだ余裕の表情だ.私も頑張ろう.そしてこの大エイドも長居は無用.一応暑くなってもいいように着替えを置いていたが気温が上がらず着替える必要もなさそうだ.さっさと出発した.

71キロエイド

  60,65,70淡々と進んで71km滝見の湯の大エイド.石川さんと柳沢さんが迎えてくれた.70kmの部の人はここがゴール,名前を呼ばれて続々ゴールテープを切っている.しかし私には単なる通過地点だ,まだ先は長い長い.この先には馬越峠が待っている.楽しみにしていたエイドのそばはすでになくなっており,空腹をバナナでみたし出発.石川さんの「まだ時間十分あるから,いける!」の言葉にすっかりその気になり走り出した.ここで残り4時間半,いま冷静に考えると峠があるのでかなり際どい時間である.しかし算数が苦手な私はこのまま走れればまにあうと信じこんでしまった.

馬越峠

 なんとかここまでこれた.どんな峠かみてやろうじゃないか!ここを走って登るのは無理なのではや歩きすると決めていた.登りきって下りを走ることができれば2つめの課題はクリアーだ.登り,歩いているのになんだかつらい,抜かされていく.焦っても仕方ないので周囲のランナーと話しながら行く.去年4分前のゴールをした方,90km以上行って収容された方,私のいるあたりはやはり,ぎりぎり完走集団になっているようだ.4分前ランナーについていければまにあうか・・・?以降はずっとこの方が完走の目印になった.下り,初ウルトラの丹後では峠の下りで苦戦した.膝にきてしまって足が動いてくれず,どんどん抜かれて涙がでそうになったという強烈な印象がある.しかし今回は違った.足にまだまだ力がある.くだり,無理な走りは決してしないが快適に進んでいく.

87キロエイド

 ここまできたらもうあきらめるわけにはいかない.うどんをいただいて体をあたため元気がでてきた.エイドのおじさんに「よくきたね.本当に走ってきたの?すごいねえ」の言葉をいただく.よーし行こう!逆に雨足はどんどん強くなってくるが気にならない.天気がどうなろうと私は7時までに帰らなければいけない.

90キロ以降

 90kmからはまた登るが不思議に足が動いてくれる.下りのダメージはないようだ.よかった.93kmエイド,前泊した宿のご主人が働いていた.「よくきたね.すごいよ.もう少しだから頑張れ」の言葉をいただく.ここまで来るとやたらと涙もろくなり見知った顔に会うと泣きそうだ.ここでちょうど13時間経過.
 95km地点,働かない頭で計算した結果キロ9分でぴったりゴールできそうだ.できれば2〜3分の余裕が欲しい.足はまだまだ元気だ.長野マラソンのラスト5kmよりはずっといい感じで走っているから大丈夫!おそらくキロ7分位で走ってるかな?などとすべていい方向に考えようとしている.しかし最後のわりと急な坂が出現.いけないことはわかってるが歩いてしまう.後ろからきたランナーに「歩いたらまにあわないよ,がんばれ」と声をかけていただく.しかたなく電信柱の法則(間隔ひとつ走ってひとつ歩く)をくりかえし登る.97kmほんとにきわどくなってきた.キロ7〜8分でぎりぎりだ.もう歩けない.歩いたら絶対まにあわない.だが平坦な道はなかなか進まない.残り2kmの表示がみつからない.もういやになってきた.「歩きたい,ちょっとまにあいませんでしたーははっ,でいいよ.100km走ったことに変りはないんだから」と,「ここで歩いてまにあわなかったら絶対後悔する.来年もこなければいけなくなる」という気持ちの葛藤だった.

そして迎えたゴール

ちょっと見づらいけど
徳武さんの完走証

 踏み切りを超え,右にまがると沿道の声援が増えてきた.あたりは暗くなってきてよくわからなかったが野辺山駅前通りにきたらしい.沿道から「おめでとう!」の言葉.えっ,ゴールはまだなんですけど・・・「かっこいいよ!」それほどでもないですが・・・・.まにあうってことだろうか?少し希望がでてきた.だが自分の時計が2分ほど遅れているため,安心できない.正確な秒がわからない.するとゴール300m手前に柳沢さん発見.さらに石川さんを発見.「まにあうよ!」の声でようやく安心しお二人に沿道を一緒に走っていただき猛ダッシュ,13時間59分16秒まさしく時間をフルに使っての完走でした!!
 ゴールではずっと応援していただいた柳沢さんに抱きついて(恥ずかしながら)大泣き.長野マラソン前の柳沢さん,三石さんと今回の自分がオーバーラップしてしまいほんとにうれしかったからだ.そしてNMCランナーの皆さんに迎えていただき握手,終盤ずっと励ましあって走ってきた方々とも握手,握手.またどこかのウルトラでの再会を約束しあったのだった.


走り終えて

★最後の3kmを除いては厳しかったなという感じはあまりなく(忘れただけ?),完走メダルもなかったせいかまだあまり完走の実感がありません.不思議ですが淡々ときてしまったという印象が強いです.ひとつ学んだことはあきらめなければゴールは確実に近づいてくる!  ・・・ですが来年はもっと余裕のゴールをめざしたいと思います.

★今回も多くの方に励ましていただき,なんとか時間内完走ができました.皆さんの励ましがなかったら確実に44秒オーバーしたことでしょう.感謝します.そしてNMCにいれていただいて良かった!

★ ウルトラの良さは走っている途中での人とのふれあいとか,自然の中にとけこめることにあるかなと感じています(けれどエイドの紙コップを無造作にポイ捨てしていく人がいるのには残念な気が・・).今回完走してますますウルトラが好きになりました.いつか萩250kmに行きたいと無謀な夢ができてしまいまいた.

★ ぎりぎり完走をめざす亀さんランナーへ
アドバイスなどといった立派なことではありませんが・・・

1つ,エイドでの長居はしない.食べるだけ食べ,軽くストレッチしたら即出発.
2つ,焦らない.100kmは長丁場です.置いていかれたと感じてもその人の得意,不得意があるので同レベルのランナーにはどこかで追いつくものです.自分のペースで走ることが大事です.
3つ,あきらめない.これが一番大事でしょうか?故障してないのなら関門にかかるか収容されるまで粘ること.
4つ,菩薩のこころ.天気が悪くなったり,足が痛くなったり,多少のことは100kmでは当たり前.すべて受け入れる気持ちだと楽です.
5つ,食べる.もう走れないと感じてもエイドで何か口にすると力がでてくるものです.亀さんの場合エイドのでんぷん質が売り切れの場合があるので,好みのものを携帯したほうが安心です.
番外,超ぎりぎり完走を狙うなら,自分の時計は秒単位まで正確にあわせておく必要があるでしょう.