ますます深みにはまっていく

人とのつながり〜だから長いのはやめられない

神戸夏休みチャレンジ24時間リレーマラソン完闘記 〜徳武さおり〜


きっかけは...
 9月末の甲州街道(215km)に,大胆にも申し込んでしまったが6月のマラニック以来長い距離が走れてない.夜通しというのも心配だ.一人で真夜中に練習するのも怖いし・・.そんな焦りを感じていたところ,ふと目に止まった大会だった.神戸か,遠いなあ,でもせっかく休みもとれたし,悩んだあげく思いきって行く事にきめた.甲州を想定して,目標は24時間動き続けること,最低100km.

現地に着いたけど...
 新神戸で地下鉄に乗り換え30分,さらにバスで10分,明石に近い山際に会場の農業公園(ワイン城)はある.地元のクラブ主催なので富士北麓のような華やかさはない.関西の常連さんが集まってきてるなという感じだ.テント設営所はリレーゾーンのまん前にあり,見ながら休憩できそうである.これは良かった.富士のように離れていては個人ではつらいから.
 チーム参加の方々のテントの隙間に一人シートをひき準備を始める.さて困った.案内には給水以外の食事については各自準備とあったのでレトルト食品をもってきたが,それを温めるには坂の上の炊事場に行かなければならない.走ってる最中にそれはまず無理と判断してぬるいまま食事することを覚悟した.

さいしょのともだち
 受付を済まし,チーム毎に記念撮影.これが明日のレース終了後ワインのラベルになり参加賞としていただける.なかなか気が利いている.個人の部はまとめて男女別の撮影.石川さんには出走すれば入賞できるときいていたが,関西は物好きが多いらしい.女子は7名もいた.しかし物好きは皆親切である.松本から一人できたと言ったら,サポートなしで?ほんま?と次々に心配していただき,しあわせの村RCの中島さんが,テントを使うよう,食事も一緒にするようチームの皆さんに紹介してくださった.神戸ハーバーRCの松尾さんにも心配していただいた.お言葉に甘えてしあわせの村RCのテントにおじゃますることにした.(ありがたい!)遠慮して隅で準備していたら,すぐ「お昼食べてないやろ?」と焼きそばをいただいてしまった.

(左前)エイドの方,(後)しあわせ村RCの方,(右)つぼ坂さん,(中央)徳武さん

さあスタートだ
 12時スタート.先が長いから全く緊張感もなくみんなのんびりしている.こんな雰囲気の大会もいいものだ.1周が1.77kmでその中に3回のアップダウン,エイドが1つ.平らなところはリレーゾーンのみというようなコースである.でも私は坂が好き.快調に走っていく.ブドウ畑のなかを抜け,坂の上からは街をながめ気持ちよいコースだ.なんでも日本のワイン発祥の地とか,ワインの有名品種(カベルネ・ソ−ヴィニヨン)がたわわに実り収穫の時を迎えようとしていた.

長野県代表として
 3時間経過.日差しは強くないのにやけに喉がかわくし,ふらふらしてきた.湿度が高くて息苦しい.エイドでスポンジをとり水をかけながらいくが辛い.エイドのおじさんが「今年はいいねえ.去年はかんかん照りやったから・・」と言うが私には全くそうは思えず「もう辛いんですけど,やっぱり長野は涼しいから・・・」と返答.すると「あんたが松本の!」とびっくりされた.松本からきた物好きは誰かと思っていたらしい.「わざわざきたんやから最後まで頑張れ」それもそうだ.簡単にやめたら旅費がもったいない.陽が落ちたらだいぶ違うだろうし我慢我慢.

はよ行き!....やめるわけにはいかない
 19時.薄暗くなってきた.しかしいっこうに気温が下がった感じはなく,ペースダウン.左足も痛いまではいかないがなんだかおかしい.これは明日までもたないかな?無理してほんとに壊したら最後だし,やめてテントで寝かせてもらって朝一番で帰ろうか・・・三田さんの言葉が頭をよぎる.しかしエイドに着くと「おう長野!頑張るねえ.」の声.こう言われると辞めますなんて口がさけても言えるわけがなく元気に通りすぎてテントへ.夕飯にそうめんをいただく.このチーム専属のシェフ(ランナー)がいて,ご夫婦で食事のきりもりをしている.一人やったら寂しいやろ?おしゃべりならまかしとき!関西ののりは楽しい.おしゃべりしてると,休憩中のチームの方々もどんどん話し掛けてくれる.中にはスパルタスロンに参加してきたなんていうすごい人も!私もあやかりたいものだ.すっかり根が生えそうだったが,あんた100kmまでは頑張らんといかんよ.はよ行き!とコースへ送り出される.

超ロングの達人からアドバイス
 松尾さんと中島さんがあいかわらずすごい勢いで走っている.東京国際レベルのランナーだからかなうはずもないが,元気だ.私はすでにかなりのゆっくりペース.登りは完全に歩きになっている.何回も抜かれるが気にしない,気にしない.後ろから野辺山完走したの?と声をかけられふりむくとスキンヘッドの男性(UMMLの長崎さん).たまたま着ていたTシャツで気付いてくれたらしい.関西の超ロングの大会では有名な方らしく,だらだら歩いてはいけない,特に遅い人ほど歩きも速くないと完走できないと教えていただく.それからは歩きもしっかり腕をふり早歩きを試した.計算上では甲州は6km/時でいけば間に合うからと思い,夜は無理に走らず歩くことにした.それがよかったのか足はさほど気にならなくなりこれならなんとか行けそうだ.

徳武さん(左)UMML長崎さん(右)

睡魔第一波...これは軽くいなす
 午前1時.はやくも睡魔におそわれる.もうだめ.右へ左へふらふらと.ベンチがあれば眠りたい.眠くてだめ,少し休もうとテントへもどる.マッサージをしていただき申し訳ないからやっぱりもう何周かしてこようと思いコースへ.睡魔は去ったようだ.夜中は個人の部のランナーが寝に入ったのか寂しい.あまり話ができないがエイドのおじさんはあいかわらず.おにぎり食べたか?少しは休めよ.塩もなめとけ.と毎周応援してくれる

睡魔第二波...これはしぶとい
 午前3時半また睡魔が.掛け声かけたりしてみるがだめ.かなりしぶとい.となりに同じようなペースで歩く人が(UMMLの永藤さん).「眠くてどうしようもない」と話したら「もうすぐ明るくなるから,そうしたら不思議に元気になるから」と励まされる.そんなはずはないと思った.もうどうにもだめだ.だめだ仮眠をとろう.テントへ戻りおかゆをいただき,2時間寝ますと毛布にくるまる.横になってはみるが本番ではこんなに仮眠できないだろうな,毛布もないだろうな,いろいろ考えてしまって結局20分ほど横になっただろうか.ふらふら起き上がり無言でくつを履き,コースへ.だれかのさくら道完走記に書いてあった「ゴーサインがなかなかでず・・・」とはこのことだ.ふわふわしていて前を見据える気力も走る元気もない.ただただ歩いた.1周に20分くらいかかっただろうか.おそろしく遅い.予定ではもう100km行ってもいいころなのに全くとどかない.石川さんが言っていた周回とウルトラとの違いってこれなんだなあと実感.

明け方の不思議体験
 午前5時.明るくなってきた.だんだん夜があけるのを見ながらはや歩き.きれいだ.永藤さんの言ったように元気になってきた.人間の体は不思議だ.テントに戻ると「もう大丈夫やね.目に元気でてきたわ.」と言われる.夜中かなりひどい顔してたんだろうなあ.ミルク・砂糖入りのコーヒー,にゅう麺をいただいてしっかり目を覚ましさあ,100kmまで頑張ろう.行ったら2時間の休憩にしようと言い聞かせる.

ついに大台突破
 午前8時すぎ,ようやく100km.あとはもう休んでもなにしてもいいわ.エイドで報告したら「長野代表,やったなあ」の誉め言葉.さらに8時の結果速報では女子の3位,個人の部では9位になっていることを教えていただく.夜中休まず亀のようにでも進んだのが順位をあげたらしい.できればこのまま抜かれたくないものと欲が出る.
 テントへ戻り100kmの報告をしたら皆さんに誉めていただいた.あとはどこまで行けるかやね!ほんとにそうだ.残り3時間半でどこまで伸ばせるか.そそくさとコースへ戻り歩き出す.もうどうやっても走れそうにない.このコースは足にくると言ったけれどそのとおり,全く足があがらず.こんなでは甲州は・・と悲しくなってくる.筋力と精神力とすべてが足りないと思った.永籐さんとまた一緒になりそんなことを話したら,「このコースで100km行けば自信もっていい.ウルトラならぜんぜん距離の伸び方がちがうから・・」と言っていただく.今年萩を9位で走った方に言われるとそんな気がしてくる.

やっぱりアイスがいい
 10時,友人夫婦が応援かけつけるからと言っていた時間である.きょろきょろしていたら,「とくたけー」の大きな声.やはり来てくれた!マラソンを始めた頃,奈良の大会で一緒になって以来やりとりをしている姫路かけっこくらぶの壷坂夫妻だ.初ウルトラの丹後も一緒に走った方で,いつも励ましてくれる.一人でのりこんできちゃったからかな?今回の応援は格別にうれしい.差し入れのアイスを食べて元気をとりもどし,すたすたはや歩き.テント前も通過.テントからは「もう休憩せんね,行けるとこまでがんばれ」の声.もちろんですよ.

長かった24時間
 11時45分,これが最後の周回.もう一周いけば12時まわるしだめだなあとエイドで話す.もう個人の部ではやめてテントにいる人も.しかしおじさんが,12時過ぎても周回に数えるからもう一周!と言う.しかたなくもう1周.リレーゾーンは応援の人やら出番が終わったチームの部の人やらで大声援.こんな中を走れるのは幸せだ.リレーゾーンを過ぎればまた歩き.すると後ろから「最後くらい走ろうよ」と声をかけられ,つられて走り出す.絶対もう走れないと思ってたのに走れるから不思議だ.長崎さんたちはさすが実力者らしく猛スピードで走っていく.チームの部では全員でゆったり走りお疲れ様!と声をかけてくれるところも.これで帰れば長かった24時間が終わるなあ.なんとか動いてたなあ.苦しかったし暑かったし野辺山よりもずっと辛くてやめたくて・・・・・走馬灯のように一日が思い起こされて涙が流れた.エイドではずっと応援してくれた方が私をみつけだして泣いてくれた.

表彰台だ!
 24時間走には自分にしかゴールがみえない.何キロ走っても,何時間走っても自由で寝ていてもいいわけだから.ある人にとってはキャンプをかねた練習といったところかもしれない.だから泣いていたらさぞかし変だろうなあ.ウルトラみたいに誰にでもゴールがわかるわけじゃないもんな.そう思ったら涙がすっとひいた.そしてゴールへ.67周,118.9km.女子の3位に入賞.もっとも7人中なので自慢はできないがうれしかった.表彰式のあと一緒に歩いたり話したりした個人の部の方々に,声をかけてもらった.甲州も頑張れよ!しあわせの村RCの皆さんとも記念写真.またおいでよ.

左から中島さん,松尾さん,徳武さん 晴れの表彰式

だからやめられない
 24時間動き続けて100kmごえ,その自分のゴールラインになんとかたどりついた.それは私にしかわからないけれども,よくやったと思える.距離もたいしていかなかったが,粘れたこと,こつこつと歩きでも進んだことは誉められる.そして一人で参加したためにたくさんの方のご好意を受けた.人のつながりを感じ,だから長いのはやめられないよなとますます深みにはまっていくのです.

さあ,次は!?
 甲州はどうなるのか.走力からいって誰もが完走するなんて思わないだろう.自分でも間に合う確率は少ないと思う.しかし今日,日本橋がちょっと見えた気がした.粘りを唯一の武器に行けるとこまで行こうと思う.それからもっと強くなって,萩も,いつか,きっと・・.それから・・・.